KHI VOICE
医療現場のIT化が進む中、電子カルテもクラウド型への移行が加速しています。なかでもクラウドネイティブ型は、将来的な機能拡張や外部サービス連携、セキュリティ対応や運用効率にも優れているのが特徴です。将来の変化に柔軟に対応するためにも、クラウドネイティブ設計の製品を選ぶことの重要性をご説明いたします。
コラム
blancの取り組み
電子カルテは“クラウドネイティブ”へ─変わる基盤、変わる経営視点─

電子カルテは、医療情報の中核を担うシステムとして、すでに多くの医療機関で日常的に利用されています。しかし今、その“当たり前”の存在に対し、根本的な見直しが迫られています。
そのキーワードは「クラウドネイティブ」。
かつては技術的な選択肢の一つにすぎなかったクラウド型電子カルテが、今や制度・政策・医療経営の中核に位置づけられつつあります。
政府方針がクラウド移行を加速させる
2024年に厚生労働省が発表した「医療DX令和ビジョン2030」の中で、電子カルテの方向性は明確に示されました。
「遅くとも2030年には概ねすべての医療機関において必要な患者の医療情報を共有するための電子カルテの導入を目指す。
この目標達成に向け、オンプレ型で、かつ、カスタマイズしている現行の電子カルテから、いわゆるクラウドネイティブを基本とする廉価なものへと移行することを図る」
この方針は、電子カルテの「導入有無」ではなく、「どういった設計思想に基づいた基盤を選ぶか」が制度的にも問われていることを意味しています。
「クラウド型」と「クラウドネイティブ」は何が違うのか?
ここで重要なのは、「クラウドネイティブ型」とは、単に“クラウド上で動作する電子カルテ”を意味するのではないという点です。
多くのクラウド型電子カルテは、もともとオンプレミス型として設計されたシステムを仮想サーバー上に載せて動かしている、いわば“移植型”です。
一方で、クラウドネイティブ型は最初からクラウド環境での利用を前提に設計された構造を持ちます。
この違いを、以下の表に簡潔にまとめました:
非ネイティブクラウド型電子カルテとクラウドネイティブ電子カルテの違い
観点  | 非ネイティブクラウド型電子カルテ  | クラウドネイティブ電子カルテ  | 
|---|---|---|
設計思想  | オンプレ型をクラウド上に移植  | クラウド環境での利用を前提に設計  | 
構成  | 1施設ごとに個別構成(シングルテナントが主)  | マルチテナント・コンテナ型などスケーラブル  | 
制度改定対応  | 各施設で個別アップデートが必要  | 全体一括反映により即応  | 
セキュリティ・BCP  | 対策は施設ごとに分散  | ゼロトラスト設計・自動フェイルオーバーなど標準搭載  | 
外部連携・AI活用  | 限定的なAPI、拡張に工数  | APIファースト設計で外部サービスやAIと高い親和性  | 
この違いが、制度改定への即応性、セキュリティ耐性、AI連携、経営分析への拡張性といった面で、大きな差となって表れてきます。
クラウドネイティブがもたらす3つの構造的価値
クラウドネイティブという設計思想がもたらす価値は、以下の3点に集約されます。
1.制度・法改正への迅速な追随
従来のオンプレミス型や単純なクラウド型では、法改正や制度変更に対して、施設ごとの個別対応が求められました。
一方、クラウドネイティブ型では、一括でのシステム更新と標準仕様化により、現場の対応負担をほぼゼロに近づけることが可能になります。
2.高度なセキュリティと可用性
クラウドネイティブな電子カルテは、ゼロトラストセキュリティや多重冗長構成などを前提とした設計がなされており、障害発生時の自動復旧・高可用性・継続運用が標準で備わっています。
3.AI・データ活用との親和性
音声入力による記録支援、自動要約、構造化、BI連携など、クラウドネイティブな構造であるからこそ、院内外のシステムとシームレスに連携できます。
「記録を残す」だけでなく、「記録を活かす」未来のカルテに不可欠な基盤です。
市場の潮流とクラウドカルテblancの実践
すでに国内では、クラウド型電子カルテの導入を進める医療機関が増加していますが、その中でも「クラウドネイティブ型」を選択する施設は、制度変化や経営課題への対応に積極的な層に広がりつつあります。
当社では、完全SaaS型のクラウドカルテ「blanc」を早期より展開し、
- 制度改定への即応性
 - BIツール(Power BI)連携による経営分析
 - モバイルカルテ・AI記録支援機能
 
といったクラウドネイティブの特性を活かした進化を、現場のニーズに応じて提供しています。
経営に問われる“設計思想“の選択
電子カルテの選定は、10年先の医療経営を左右する投資です。
これからの時代には、変化を恐れず、進化を前提とした基盤が求められています。
クラウドネイティブとは、まさにその“進化し続ける力“を設計思想として備えた仕組みと言えます。
制度改定、AIの進化、医療連携の拡大——。
どんな変化の波にも柔軟に対応できる構造こそが、医療機関の持続的な競争力を支えます。
これからの電子カルテは、進化し続けることが前提の基盤へ。
その答えが、クラウドネイティブです。